【長期安定発電のカギとなるコストと効果がバランスした保全】
FIT法(再エネ特措法)の改正で、新設はもちろんすでに稼働中の太陽光発電設備についても、保全体制を含む事業計画の提出が義務付けられました。それに関連して、国がガイドラインの策定に向けて動いていることは前回お知らせしたとおりです。
とはいうものの、保全にはコストがかかります。そのコストが発電事業自体の事業性を損なうものであれば本末転倒となってしまいます。
そこで必要となるのが、コストと効果のバランスといえます。今回は、このバランスを取るためにオールラウンダーな保全技術者が必要なことを取り上げます。
【最大の個人資産である住宅を守る】
すでに200万棟以上に設置(平成28年4月末時点:経済産業省)されている住宅用太陽光発電設備は、余剰買取制度もさることながらポストFITに向けてゼロエネ住宅化を進める国の政策によってますます増加していくと見込まれます。こうした動きは、住宅における太陽光発電システムの重要性を一層増大させていくことになるでしょう。
その中で、太陽光発電設備の健全性を維持することが非常に重要であることはもちろんですが、最大の個人資産といえる住宅を守ることも求められています。太陽光発電設備の設置による雨漏りや発火事故などは、住宅の価値に重大な損害を与えるのみならず人命にかかわる可能性もあるからです。
【発電事業の長期安定をはかる】
40万か所以上(平成28年4月末時点:経済産業省)で導入されている産業用太陽光発電設備においては事業の長期安定が重要です。そのために、発電設備の点検・保守を適切に行うことが必要であることはもちろんですが、立地についても適正さが求められます。
このたびの法改正で、違法開発などの案件については、稼働中であっても認定取消されることになったほか、土砂災害の発生や近隣トラブルなども重要な問題と考えられています。
特に野立設備の場合、山林を開発することが多いことから、発電設備の安定稼働に土木設備の健全性が重要なカギを握っています。
こうした土木設備の重要性は、国土交通省が宅地造成等規制法の運用において、一定の規模の造成地に排水施設を設置する場合に一級建築士等の資格者による設計を求めていることからもわかります。
【オールラウンダーと専門技術者の役割分担】
以上のように、総合的な保全が必要なことは明らかですが、発電機器やシステムはもちろん屋根や土木設備にかかわる専門技術者がそれぞれの専門分野だけの保全にあたるのではコストは膨大なものとなり、大規模な発電所を除いて事業性を損なってしまいます。それでは前述のように本末転倒といえるでしょう。
そこで必要となるのが、オールラウンダーな保全技術者といえます。
オールラウンダーな保全技術者が、発電所の上から下まで全体を点検・保守し、専門業者でなければ対処できない補修等が必要となった場合には保全技術者と専門業者と協働して対処するといった役割分担をすることで、コストと効果のバランスを取ることが可能となります。
本財団は、このような役割分担によって地域における保全業と専門工事業の有機的な連携をつくり、国が目指している地域に根付いたエネルギー関連産業を育成することが必要だと考えています。
【オールラウンダーに求められる知識】
それでは、オールラウンダーの保全技術者にはどのような知識が求められるのでしょうか。
本財団では、各機器、システム設計、架台を含む点検・保守、電気事業法などの発電設備に関連する基礎知識に加え、リフォーム瑕疵保険などの建築関連制度、森林法や景観法など立地等にかかる各種法令、土木設備の点検・保守、労働安全衛生や廃棄物処理に関する基礎知識が必要と考えています。
こうした知識を身につけていただくため、本財団では「二級太陽光発電設備保全技術者養成講座」に次のカリキュラムを設けています。
1.
太陽電池モジュールの基礎知識
2.
システムの基礎知識
3.
システム設計と電気工事の基礎知識
4.
システムの点検と測定
5.
事故事例とその対策
6.
電気関連法令の基礎知識
7.
建設関連法令の基礎知識(土木設備の点検を含む)
8.
その他関連法令の基礎知識
9.
実習
※ 二級太陽光発電設備保全技術者とは、保全業務にあたるオールラウンダーな現場技術者で、一級は今後設ける管理技術者としています。
【9月開講のご案内】
保全技術者の育成が急がれるところですが、本財団では9月も本講座を開講します。
講座の様子をブログで紹介していますので是非ご覧ください。
[FIT法改正を受けた講座内容強化の紹介] http://m-ref.blog.jp/archives/5183285.html
講座ではFIT法改正や今後の国の政策動向についても取り上げ解説します。
次号もぜひご期待ください。
【「太陽光発電設備保全技術者養成講座」受講者募集中】
[太陽光発電設備保全技術者養成講座] http://m-ref.or.jp/course.html
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「二級太陽光発電設備保全技術者養成講座」
開催のお知らせ
[日 程] 2日間通しの講座となります。
【期日】 平成28年9月14日(水)・15日(木)
【時間】 一日目 13:20~17:30 二日目 9:00~17:00
[会 場] NPC日本印刷株式会社 i-Shop(セミナールーム)
東京都豊島区東池袋4-41-24
[受講資格] 次のいずれかに該当する方。
・電気工事の知識経験を有する方
・建築工事の知識経験を有する方
・太陽光発電設備の知識経験を有する方
[合 格 者] 検定に合格されると認定技術者として登録され、
以下の証書等が交付されます。
・認定証
・資格者証(顔写真入りプラスティックカード)
[CPD認定]本講座は全建築系CPDの認定プログラムです。
対象となる方は資格者番号等をご持参いただければ、
講座受付にてご登録(10単位)いただけます。
[受 講 料] 54,000円(税込)
(内訳:受講料・検定料 30,000円,登録料 20,000円)
[定 員] 30名
[主 催] 一般財団法人再生可能エネルギー保全技術協会
[申込方法] 1.下記の当財団ホームページからお申し込みください。
http://m-ref.or.jp/tlc.html
2.お申込内容の確認メールが自動返信されますので、
その内容に従って受講料をお振り込みください。
3.受講料のお振込を確認後、受講資料一式を郵送します。
必要事項を記載・添付の上、受講当日にご持参ください。
以上